自身がHIVに感染しても相手に移さない方法とは?
20世紀まで、HIV(エイズウイルス)は、「死の病」と考えられていました。
しかし、医療の進歩により革新的な治療薬が開発され、早期に治療を受ければ問題なく日常生活を送ることが可能になりました。
とはいえ、自身がHIVに感染していると分かった場合、「相手に移ってしまうのでは…?」と必要以上に気を遣い、日常生活に支障をきたすのではないかと心配する方も多いと思います。
ところが、HIVの特性を正しく理解していれば、相手に移す可能性を限りなくゼロに近づけることができるのです。
そこで今回は、自身がHIVに感染した場合でも相手に移さない方法について紹介します。
Contents
HIVとはどんな病気なのか?
HIVは、アフリカに生息するチンパンジーが起源ではないかと言われています。
1930年ころ、SIV(サル免疫不全ウイルス)に感染したチンパンジーを食べた人がHIVに感染し、そこから地球全体に広まったという説が有力です。
HIVに感染すると、さまざまな病原体から私たちの体を守っている「免疫機能」が働かなくなります。
このため、健康な人なら何でもない細菌、ウイルス、カビなどに抵抗できなくなり、病気にかかりやすくなるのです。
仮にエイズに感染してしまったとしても、自覚症状を得ることは非常に難しく、感染から平均10年後に発症すると言われています。
HIV感染のパターン
HIVの感染については、以下の3パターンがあります。
1 性行為による感染
精液や膣分泌液中に含まれているHIVが、粘膜や傷口を通して感染することが考えられます。感染率は、コンドームなどの避妊器具無しで約1%です。
2 血液による感染
血液中に含まれるHIVが、粘膜や傷口を通して感染することが考えられます。感染率は、約0.3%です。
3 母子感染
妊娠中の胎盤や、出産後の母乳を通しての感染が考えられます。感染率は、20~30%です。
HIVを相手に移さないための行動
上記をふまえ、仮に自分自身がHIVに感染してしまった場合、どのような行動をとれば相手に移さずに日常生活を送ることができるのでしょうか?
まず、HIVは、精液や膣分泌液、血液を介して感染するという特徴があります。これらが関わらない行動をとったとしても、相手に感染させてしまうことは絶対にありません。
例えば、相手の身体に触れる、握手をする、キスをする、一緒にお風呂に入る、目の前で咳やくしゃみをする、一緒のお皿で食事をする、ジュースの回し飲みをするなどです。
従って、共同生活を送るというだけでは絶対にHIVに感染しないので、必要以上に気を 遣う必要はありません。
1. コンドームの使用
性行為の際にコンドームを正しく使用することは、HIVをはじめとする性感染症の予防に非常に有効です。コンドームはバリアとして機能し、ウイルスが体液を通じて伝播するのを防ぎます。特に、ウイルス量が高い場合や、治療を開始していない場合には、コンドームの使用が極めて重要です。
また、コンドームを使用することで、他の性感染症からも守ることができます。
2. 抗レトロウイルス療法(ART)を継続的に受ける
抗レトロウイルス療法(ART)は、HIVに感染した人が受ける薬物治療です。
この治療の主な目的は、体内のHIVウイルス量を抑制し、健康を維持することです。ARTを継続的に受けることで、ウイルス量は検出限界以下にまで低下し、この状態になると、相手にHIVを移すリスクはほぼゼロになります。
この現象は「Undetectable = Untransmittable(検出できない=感染しない)」、通称「U=U」と呼ばれ、HIVの予防において非常に重要な考え方です。
3. プレップ(PrEP)の利用を検討
HIVに感染していないパートナーが感染するリスクを減らすために、プレップ(PrEP: Pre-Exposure Prophylaxis)と呼ばれる予防的な薬物療法を考慮することができます。
プレップは、HIV感染リスクが高い人が抗HIV薬を事前に服用することで、感染を防ぐ方法です。
適切にプレップを使用することで、HIVに感染するリスクを大幅に低減することができます。
HIV感染症状
HIVに感染し免疫力が低下した場合、次のような症状が現れます。
・寝汗や発熱が続く
・首の回り、脇の下、股のつけねなどのリンパ腺が腫れる
・疲れやすくなる
・下痢をするようになり、食欲がなくなる
このような症状が現れた場合、HIVに感染している可能性があります。
早急に最寄りの医療機関に受診しましょう。
まとめ
以上、自身がHIVでも相手に移さない方法について紹介しました。
性行為以外では、ほぼ相手に移らないということが理解できたと思います。
中には、「触られた感染する」のように間違った認識が横行している場合もあるので、皆で正しい認識を広めていきましょう。
また、不安や疑問がある場合は、ぜひ医師に相談してください。
専門家のアドバイスを受けることで、より安心して過ごすことができますし、最新の情報に基づいた最適なケアを受けることができます。
健康は最優先ですので、何か心配なことがあれば、迷わず医療機関に足を運びましょう。