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【LGBTのチェック表】あなたの性自認や性役割を再確認!アイデンティティスペクトラムとは何か?

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明確な定義はない

 今回は、「アイデンティティスペクトラム」という言葉について解説していきたいと思います。

さて、一般にはあまり聞きなれない言葉ですが、セクシャル・マイノリティの分野では良く使用される言葉です。

しかし、意味を調べても明確な定義というものは見つかりません。

 では、分解してみましょう。

まず、「アイデンティティ(Identity)」ですが、辞書で調べると「自己同一性」「自己認識」などと書かれており、抽象的で解りづらいです。

中には、「自分とはだれであるか(ということ)」と書いてあるものもあり、もはや哲学の世界に入り込んでしまっています。

そもそも、正しく理解をするという事が難しい言葉なんです。

 次に、「スペクトラム(Spectrum)」ですが、「意見、減少、症状があいまいな境界を持ちながら連続していること」とあります。

いってみれば、グラデーションのようなものと理解できます。

人格のグラデーション

 つまりアイデンティティスペクトラムとは、(性的な)人格のグラデーションのようなものです。

 例えば、その辺にある色を指さされ、「これは何色ですか?」と問われても、正確に答えようと思ったら非常に難しいと思います。

たいがい、「青っぽい色」とか、「黒と赤を混ぜたような色」みたいな答え方になると思います。

一番簡単なのは、グラデーションの図を持ってきて、指をさしながら「この色」と説明することです。

 人格についても、色と同じく自分を一言で説明する事はなかなか難しいことだと思います。

「あなたは男ですか?女ですか?」と問われた場合、LGBT当事者はとっても困ってしまいます。

「体は男だけど心は女」という方の場合、何と答えればよいのでしょうか?

 そこで、アイデンティティスペクトラムを活用する事により、自分の性的な人格が、グラデーション上のどこに属するかを把握することができます。

 少し難しいかもしれませんが、そもそも明確な定義というものはありませんので、ざっくりイメージできればそれでオッケーです。

5つの分類分け

アイデンティティスペクトラムは、「生物学性」「性自認性」「性役割」「恋愛指向」「性指向」の5つに分類されます。

そしてそれぞれの分野ごとに、自分がグラデーション上のどの辺に位置するかを決めていくわけです。

イメージとしては、下図のようなものを言います。

ちなみに、これはあくまでイメージ図なので、「この図じゃなきゃダメ」というものではありません。

自分で把握しやすいものでしたら、どのようなものを活用しても構いません。

では、さらに一つずつ説明していきましょう。

生物学性

 これは、遺伝子上自分は男性か女性かを分類するものです。

人間は、生まれながらに染色体というものを持ち、男性であれば「XY」、女性であれば「XX」と決められています。

よって、大部分の方は左端(女性)若しくは右端(男性)に位置すると思われます。

 例外として、インターセックスと呼ばれる人たちがます。

これは、男性と女性の生理学的性質を両方とも有する人のことで、世界的なファッションモデルのハンネ・ギャビー・オディールが自らインターセックスであるとカミングアウトしています。

性自認性

 心の中では自分はどのように認識しているかという事で、身体構造上の性(生物学性)は関係ありません。

 ちなみに、生物学性と性自認の組み合わせにより、下表のように呼び方が変わりますので、知識として覚えておくとよいでしょう。

生物学性

性自認

呼 称

シスジェンダー男性

トランスジェンダー男性

トランスジェンダー女性

シスジェンダー女性

 一方で、男と女だけで簡単に割り切れないところが難しいところです。

中には、「男性と女性のちょうど中間」「男性と女性の両方」「男性でも女性でもない」という性自認をしている人もいます。

そのような人たちをXジェンダーと呼びます。

 さらに、「男性か女性かわからない」「あえて男性でも女性でもない立場を取っている」という人のことをクエスチョニングと呼びます

性役割

 難しい言い方をすれば、性別に社会的に期待されている役割のことです。

例えば、「女はおしとやかでなければならない」と言われているので、おしとやかな女性を演じていれば、それは女性としての性役割を果たしていると言えます。

恋愛指向

 恋愛対象のことです。

後述する性指向とは異なり、性行為の対象ではなく、純粋に「恋愛できる性別かどうか」になります。

 そして、一般的に「性自認が男性=恋愛指向が女性」「性自認が女性=恋愛指向が男性」と認識されているのに対して、「性自認と恋愛指向が共に男性」の人をゲイ、「性自認と恋愛指向が共に女性」の人をレズビアンと呼びます。

性指向

 恋愛指向と異なり、性行為の対象となるかどうかです。

基本的に恋愛指向と性指向は同一となる場合が多いですが、中には「男女ともに恋愛対象となるけど、男性としか性行為ができない」という人や、「恋愛対象は女性だけど、男女ともに性行為ができる」という人もいるため、恋愛指向とは別物と理解されます。

まとめ

 いかがだったでしょうか?記事の前段でも書きましたが、人間の内面というものは、簡単に言葉では言い表せるものではありません。

この記事では、アイデンティティスペクトラムを5つの分野に分けて説明しましたが、これらは相互が複雑に絡み合いながら人格という一つのシステムを形成しているため、自分の性的な内面を完全に説明する事は不可能に近いのかもしれません。

 しかし、この記事を読むことによって、皆さんが漠然と抱いている「自分とは何者なのか?」という問いに対し、少しでも回答に近づけるような手伝いができれば幸いと思います。