性別変更条件が日本は厳しすぎる!条件緩和される日はくるのか?
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高い性別変更のハードル
日本で性別変更が認められたのは、2004年からで、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(以下、「特例法」)が施行されたことによります。
これを皮切りに、トランスジェンダーを中心としたLGBT当事者が次々と性別変更処置を行っていき、その数は年々増え続け、今ではのべ1万人近い人たちが性別変更を行ってきました。
2019年には、夢をあきらめずに68歳で性別変更を行った人が、その半生を本にして出版したことが話題となりましたが、性自認と身体性別が異なるトランスジェンダーには、「いつかは性別変更」と思う人が多いと言われています。
未だに性別変更を禁止している国が海外にある中で、この特例法を制定したということは、日本がLGBTに対して一応の理解を示したという形になります。
しかし、この特例法には問題があると指摘する声が多く上がっていることも触れておかなければなりません。その問題とは、性別変更のハードルが厳しすぎるというものです。
特例法の内容
特例法第3条において、性別変更の条件を以下のように定めています。
①二十歳以上であること。
②現に婚姻をしていないこと。
③現に未成年の子がいないこと。
④生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
⑤その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
そしてこの中で、性別変更のハードルを著しく高くしているものが④と⑤なのです。
まず④ですが、これは生殖腺のことについて書かれている条項です。そもそも生殖腺とは、男性であれば睾丸や精巣、女性であれば卵巣のことをいいますので、それらを既に除去しているか又は機能しないようになっていることを示します。
次に⑤ですが、これは男性であれば陰茎、女性であれば膣が付いていなければならないことを示します。
従って、④と⑤をクリアするためには、性適合手術を受けなければいけないということになるのです。性適合手術は、一部保険が適応されるようになってことにより以前よりは受けやすくなったとはいえ、高額な費用が必要になります。また、手術が終わるまでに長期間を要するため、仕事を休職しなければならないなど、社会生活に支障をきたす可能性があります。また、性別変更は望むものの手術は望まないというトランスジェンダーもたくさんいます。
心身にリスクを伴うとともに、経済負担も大きい性適合手術を強要するこの条項に、「トランスジェンダーに対する人権侵害だ」と疑問の声が多数挙がっているのです。
海外の事情
一方、海外ではどうなのか。LGBT先進国と言われるアメリカを例にとると、ニューヨーク市では、認可された医療機関や精神医療機関からの宣誓供述書を提出すれば性別変更が可能となっており、手術は必要ありません。また、アルゼンチンでは本人の自己申告により性別変更が可能となっています。このように、欧州諸国をはじめとする世界中で、手術なしに性別変更を可能とする国が存在するのです。
条件緩和の動き
このような世界の潮流を受け、日本国内でも、徐々に特例法における手術要件の緩和を求める動きが出てきています。最近では、2020年に日本学術会議が、「現行の特例法を廃止して性別記載の変更手続に係る新法を制定するべき」と主張しています。
日本学術会議は、そもそも特例法は現在の国際人権基準と照らし合わせてみても明らかに時代遅れであると提言するともに、”社会的な混乱を生ずる”という理由から敢えて高いハードルに設定している点に関しても触れ、自己申告のみで性別変更が可能な国ですらそのような混乱は生じていないことから、手術不要でも問題はないとしています。
まとめ
WHOは、性同一性障害を精神疾患として捉えていた従来の考えから脱却し、病気や障害ではないと宣言しました。このように、今後はLGBTをはじめとする人権保護の動きは、ますます加速していくものと考えられます。日本が先進国としての歩みを止めない限り、この世界の潮流には逆らえないはずなのです。
一日も早く「手術要件」が排除されるように、または日本学術会議が提言したような現行法に変わる新法が制定されるように、みんなで声を挙げ続けることが大切なのです。