MTFよりも高額?!FTMの性適合手術の費用はいくら?
心と体の不一致
想像してみてください、男性(女性)であるあなたは、ある朝起きてみたら女(男)になっていた。
そして、周囲もあなたを女(男)として認識し、今後の人生も女(男)として生活していかなければならない。
まるで映画化小説のような出来事ですが、仮に本当にこういうことが起こってしまったら、日常生活に支障が出ることは確実です。
女(男)用のトイレを使用しなければなりませんし、銭湯に行った時はもちろん女(男)湯に入らなければなりません。
そしてなによりも、恋愛をまともにできません。好きになる対象が異性だった場合、向こうからすればあなたは友達以上の関係に見られることはまずありえません。
このような問題は、心と体が一致しないことから起こることですが、トランスジェンダーの方たちは、毎日このような葛藤を心に抱え、悩んでいます。
FTMの悩み
大阪府在住の斎藤卓也さん(24歳、仮名)は、女性として生まれました。幼少期は友達も多く、何不自由ない生活を送っていました。
しかし、卓也さんが小学3年生の時、女の子の友達同士で「好きな人は誰か」という話をしている時、自分以外の全員が男の子の名前を挙げたのです。
卓也さんの恋愛対象は女の子だったため、周囲との感覚のズレに違和感を覚えたといいます。
そして卓也さんが高校生の時、同じ部活の女の子のことを好きになりました。
最初は、表面上には仲のいい友達として付き合っていましたが、ついに我慢ができず「恋愛対象として好き」と告白をしたところ、「そういう目で見られるのはムリ」と断られるという辛い経験をしました。
数年後、卓也さんは「FTM」という言葉を知ります。
FTMとは、「Female to Male」の略で、体は女性、心は男性の人のことを言います。(反対に、体は男性、心は女性の人をMTF「Male to Female」と言います)
その時、卓也さんは初めて自分の特性のことを理解しました。
そして、体と心が一致しない自分をいつか変えたいと思うようになります。
そして22歳の夏、親の反対を押し切り、体を男性に変える手術を決心します。
手術直後は複雑な気持ちになりましたが、戸籍も男に変え、名前も卓也に改名し、新しい人生を歩むことになりました。
卓也さんはその時、心と体が一致したことにより、今までにないくらいの爽快感を覚えたといいます。
それ以来、もう性別に関して悩むことはなくなり、新しい彼女もできて、幸せな人生を送っています。
性適合手術
卓也さんの受けた手術は、「性適合手術」といいます。
この手術は、性別の不一致や、性同一性障害を抱える人を対象にし、外科的手法により形態を変更させる手術のことをいいます。
具体的には、FTM手術の場合、子宮卵巣摘出術、膣粘膜切除、膣閉鎖術、尿道延長術、陰茎形成術などがあります。
MTF手術の場合は、精巣摘出術、陰茎切除術、造膣術、陰核形成術、外陰部形成術などがあります。
トランスジェンダーの人たちの多くは、卓也さんのように「いつかは性適合手術を受けたい」と考えています。
これには、心と体が合致するという心理的満足感を得れるという他に、戸籍上の性別を変更することができるという大きなメリットがあります。
現在の法律では、戸籍上の性別を変更する条件は全部で6つありますが、その中の一つに「他の性別の性器の部分に近似する外観を備えること」とあります。
つまり、男性であれば、陰茎を切除し、造膣すること。女性であれば、膣を閉鎖し、外陰部を形成することです。
では、気になる手術料はいくらくらいなのでしょうか?今回は、FTM手術のパターンを例に取って紹介します。
FTM手術費用
FTM手術の場合、MTF手術よりも高額であると言われています。
一昔前までは、手術に数百万円程の費用がかかるとされ、あまりの高額さに手術を諦める人や、手術を始めたものの費用を払いきれずに途中で断念する人が後を絶ちませんでした。
しかし、2018年4月から、限定的ではありますが性適合手術が保険適応となり、費用負担はグッと減りました。
手術の完成度や受ける病院によって料金は変わりますが、一般的な費用としては下表のようになっています。
手術名 | 費用 | 概要 |
子宮全摘出 | 約22万円 | 子宮を摘出します。 |
子宮付属器腫瘍摘出 | 約26万円 | 卵巣、卵管を摘出します。これにより、女性ホルモンが分泌されなくなります。 |
尿道延長 | 約33万円 | 皮膚などの組織を切り取り、膣前壁皮弁、大小陰唇、前庭部に移植することにより尿道を作り、後の陰茎形成の下準備をします。 |
陰茎形成 | 約52万円 | 男性器を形成します。手術の方法は、腹部皮弁法、陰核陰茎形成術、マイクロサージャリー法の3つがあります。 |
乳房切除 | 約6万円 | 乳房を切除します。 |
性適合手術先進国 タイ
タイは、性適合手術に関しては世界で最も進んでいると言われています。そして、タイでの手術が日本より優れている点は主に二つあります。
一つ目は、術例の多さです。性適合手術が行われている数は、世界の先進国と比較してもタイが圧倒的に多いと言われています。
それゆえ、所属する医師の経験値や技量は世界トップクラスと言えるでしょう。
二つ目は、日本と比較して手術費用が安いという事です。
も、手術が保険適応対象となったため昔と比べて差は縮まりましたが、それでもタイの方が安いです。
これらの理由により、毎年大勢の人が性適合手術を受けにタイに渡航しています。
まとめ
今回は、FTMの性適合手術にスポットライトを当てました。
勘違いしてはいけないのは、すべてのFTMの人が性適合手術を望んでいるわけではないという事です。
中には、経済的に脆弱であったり、重篤な身体的疾患を抱えているため手術を受けることができない人もいます。
また、本来備わっている生殖機能を喪失してしまうことにもなるため、医学理論上の問題点を指摘する医師もいます。
トランスジェンダーの方たちが快適な社会生活を営むためには、今後更なる法整備が必要になってくることでしょう。